医師の自殺率が高いことについて

  • 2021年8月31日
  • 2024年10月28日
  • 体験談

皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。

臨床医として働く皆さんは、「医師の自殺率が高い」ことについて日々実感しているのではないでしょうか。

私も臨床医時代は、「一生こんな生活が続くのか。過労死するか過労自殺するしか道は無い」と思っていました。

両親に、上記のように悩んでいることを伝えたところ、

「え~?もっと頑張ったら?」と雑にあしらわれ、

この人たちに相談しても無駄だ、自分で何とかしなきゃ、と一念発起し、転職活動に踏み出したのでした。

この記事は、

働き方に悩む臨床医の皆さんが、

悩んでいるのは自分だけではないと気付くきっかけになる

ことを願って書きました。

是非ご一読いただければと思います。

【医師の自殺率】米国医師の自殺率は一般の2倍以上

医師の自殺について報告した下記論文によると、「アメリカ合衆国では毎年推定300~400人の医師が自殺で亡くなっており、これは人口10万人あたり28~40人の割合で、一般人口の2倍以上」と記載されています。

Farmer, Blake (July 31, 2018). “When Doctors Struggle With Suicide, Their Profession Often Fails Them”. NPR. Retrieved December 5, 2019.

医療業界は、医師や医療スタッフは、高度に訓練された持久力アスリートのように、長時間労働を強いられ、仕事による疲労や精神的負担を無視するように訓練されているという前提に立っている。

しかし、多くの医師にとって、日々のストレスは深刻なうつ病につながる可能性がある。これが、医師が一般の人々よりも自殺する確率がはるかに高い理由の一つである。

自殺衝動を抑えようとする医師にとって特に危険なのは、彼らが自らの命を絶つ方法を正確に知っており、その手段に容易にアクセスできることが多いということだ。

ーFarmer, Blake (July 31, 2018). “When Doctors Struggle With Suicide, Their Profession Often Fails Them”. NPR. Retrieved December 5, 2019.

また信じがたいことですが、歴史を遡ってみると、

「自殺念慮」について相談した医師は「医師免許取り消しのリスク」「将来のキャリアアップの障壁」「専門家としての特権の制限」など職業上の罰則に直面することがあったとのこと。

これらの要因から、医師自身が適切な治療にアクセスするまでに、高いハードルがそびえ立っているということが予想できます。

【医師の自殺率】日本における医師の自殺率は一般の1.3倍

また、古いのですがこんなデータがあります。

警視庁発表の「平成18年中における自殺の概要資料」によると、医師は年間90人が自殺で死亡しており、自殺率は一般の1.3倍だったとのことです。

(平成19年以降は「医療・保健従事者」とまとめられ、医師の自殺率は不明)

自殺者数|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

その後、医師の労働環境が劇的に改善されたとは思えないので、現在も高い自殺率を維持しているのではないでしょうか。

【医師の自殺率】高い理由を考えてみる①私の経験から

要因が色々あるのは承知ですが、今回は下記4つの要因について、私の臨床医時代の経験から考えてみたいと思います。

  1. 激務
  2. 責任が重い
  3. 医療体制が脆弱
  4. 古い体質

激務

私の臨床医時代は、主治医制だったため、24時間365日拘束されていました。

「先生頼みやすいから」というお褒めの言葉?をいただき、

びっくりするくらいどうでもいいことで呼び出されたり、

他の診療科の担当疾患だと分かった上で救急外来に呼び出されたり(その診療科の先生には頼みにくいと)、

研究会参加のため休みを取っていたにも関わらず呼び出されたり、

二日連続で救急外来当直したり、

待機当番の先輩医師に頼まれ、代わりに呼び出しに応じたり(しかも何度も)、

休日は一人で診療科の患者全員(50人くらい)回診させられたり、

先輩医師の外来を代わりにやらされたり、

退職した日の夜も呼び出されたりしました。

非医療者の知人に説明しても、信じてもらえませんでした(笑)。

このように夜間・休日を問わず働かされていると、十分な休養が取れず、心身の健康障害をきたすことは明白です。

現在は職域では「勤務間インターバル制度」を設け、休養出来る時間を確保する流れになっていますが、皆さんの職場ではどうでしょうか?

責任が重い

命を預かる仕事だから当然責任が重いですよね。

臨床は7年半やりましたが、いつまで経っても「怖い」という気持ちが無くなりませんでした。

また、病院全体で「医師に責任を押し付ける」風潮もありました。

看護師さんと患者さんが揉めた時、私が助けを求められ仲裁したのですが、私が患者さんを怒らせたことにされました。

私の犠牲でその看護師さんが助かったのなら、良かったのかもしれないですが…他にも理不尽な思いを沢山しました。

責任の重さや人間関係のトラブルは、仕事におけるストレス要因の上位です。

こういうことをあまり気にしないタイプの人なら働き続けられると思いますが、私は苦痛で仕方なかったです。

医療体制が脆弱

私が臨床医として働き始めた地域は、今思えば医療崩壊していました。

他の病院の話ですが、その地域の中核病院にも関わらず、研修医が指導もなく抗癌剤治療をしていたり、受け持ち患者数が多過ぎて数日に1回しか診察に行けなかったり、医師1人しかいない診療科があったり、集団離職で医師0人になった診療科があったにも関わらず隠して診療を続けたり(他の診療科の医師が診ることになった)、医師同士で患者を押し付け合ったり。

病院関係者も「何とかなっているから」と、この状況を改善しようとしない。

私が働いていた病院も似たようなもので、「病院って、こんなに脆弱な体制で、綱渡りのような診療を行っているんだ…」と愕然としました。

「たくさん症例を経験したい」と、その地域を選んだ自分の責任ですが、 こんな所でまともな指導を受けられるわけがありませんでした。

このように組織や指導者への不信感、仕事のやり甲斐の無さは、仕事のモチベーションを削ぐでしょう。

私は結局は「他県の大学院に進学する」ことでその地域を離れたのですが、今も残っている友人医師たちの仕事の悩みは深刻で、胸が締め付けられる思いがします。

古い体質

病院の中は時代が止まっているようでした。

私が働き始めた市中病院は紙カルテ、次に働いた市中病院も紙カルテ(どちらも大きい病院なのですが…)。

大学病院はさすがに電子カルテでしたが、使いこなせない教授は、電子カルテ入力係として若い医師を外来に置いていました。

市中病院では時間外労働時間は「0時間」と申告させられ、

大学病院ではいわゆる無給医でした。

パワハラ、セクハラ、マタハラ、アカハラ、あらゆるハラスメントが当たり前でしたね。

忙しい・年配医師が変化を嫌うといったことを理由に、作業システムを効率化することなく、いつまでも忙しい…という悪循環。

「あなたの勉強のためだから」と言えば、安い給料で無限に働かせてもいい、ハラスメントをしてもいいという考え。

書けば書くほど、こんな職場で働きたくないですね。

【医師の自殺率】高い理由を考えてみる②解決策は?

私の経験が全ての臨床現場に当てはまるわけではありませんが、同じような経験をしてきた方は少なくないと思います。

どうですか、異常だと思いませんか?

産業医の立場から見ても、ハッキリ異常だと言えます。

そんな環境でも、いきいき仕事を楽しんでいるならいいのですが(たまにいますよね、スーパーマンみたいな先生)、

もしあなたが命を絶つことを考える程苦しんでいるのなら、速やかに安全な場所に避難してください。

みんな事情が違うことは承知の上で言いますが、あなた自身が別の環境に移動しない限り、解決策は無いと思います。

臨床医の働きにくさというのは、内的要因よりも外的要因の方が圧倒的に大きいです。

もちろん、その外的要因を何とか出来るならそれがいいですが、時間がかかり過ぎたり、自分一人ではどうにも出来ないことが大半です。

私がブログのタイトルに『転職』と入れたのは、「自分で道を選ぶことが出来る手段だから」です。

もちろん強制するものではありませんが、このまま働いて過労死したり過労自殺する人生と、

転職によってより良い働き方が出来るようになった人生、

どちらがあなたにとって、あなたの家族にとって、幸せでしょうか。

一度自分の胸に問いかけてみてください。

 

『医師転職のススメ』シリーズのご紹介

当ブログの集大成となる「医師転職」に特化した内容で、前後編の2部作です。

医師転職のススメ〜「転職したくなる!」前編』(著:更紗)

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働き方に悩んでいる臨床医の皆さんには、是非読んでいただきたいです。
どうぞ宜しくお願い致します。
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