【未来世界での生存戦略!】『働き方2.0 vs 4.0』まとめ

  • 2023年10月27日
  • 2023年10月28日
  • 読書

皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。

皆さんは、医師になって何年が経過しましたか?

「医師になってから今まで、ずっと総合病院で同じように働いている」…そんな方も多いと思います。

しかし世界では、特にアメリカでは、人々の働き方が激変しているのです。

私は、自分が完全に世界の潮流に乗り遅れていたことに気付きました。

きっかけは、『働き方2.0 vs 4.0 不条理な会社人生から自由になれる』(著:橘玲、出版:PHP研究所)を読んだことです。

この本は2019年3月20日に発売されましたが、「もっと早く読んでおけば良かった…!」と思うほどの衝撃的な内容でした。

というのも、テクノロジーの指数関数的成長により、もはや「医師なら大丈夫でしょ」「医師だけは特別でしょ」とは言っていられない事態になってきているのです。

更紗
日本人の働き方は全然ヴァージョンアップされてないみたいですけど(汗)、これから大丈夫なんですか?

今回の記事では、世界で既に始まっている「未来の働き方」を見ていきます。

更に、そんな未来とのギャップを埋めるためにどうすればいいのか、医師目線で「医師に特化した未来の働き方」をまとめています。

「世界を視野に仕事をしたい」、「医師として新しい働き方をしたい」方には参考になる内容だと思います。

大ボリュームで恐縮ですが(汗)、是非ご一読ください!

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働き方改革を実現しても世界に追いつけない!?日本人の働き方

著者の橘さんは、本書で「働き方」を下記のように定義をしています。

働き方1.0:年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0:成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3.0:プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0:フリーエージェント(ギグエコノミー)
働き方5.0:機械が全ての仕事を行うユートピア/ディストピア

「働き方改革」とは、機能不全を起こした「働き方1.0」を強引に「働き方2.0」にヴァージョンアップしようとするものです。

しかし問題は、「働き方2.0」を実現したとしても、それでも全然世界の潮流に追いつけないことです。

最先端の働き方は、3.0から4.0に向けて大きく変わりつつあるからです。

うすうす感じていたけど、そんなに差をつけられていたとは…。

その背景にあるのは、中国やインドなど新興国を中心とする急速な経済発展(グローバル化)と、テクノロジーの驚異的な性能向上です。

私たち日本人が抱える困難は、働き方が「未来世界」へと向かう中で、未だに「前近代世界」のタコツボに押し込められていることにあるのです。

更紗
正直、臨床医の働き方も全然アップデートされていないですよね…先行き不安になってきました。

エクスペディアジャパンが24ヶ国の社員を対象に実施した2013年の調査では、雇用状況に満足している日本の社員は60%に留まり、調査対象国中最低を記録しました。トップは90%のノルウェー、2位がインド、3位がマレーシアでした。

90%の人が雇用状況に満足しているノルウェー、すごすぎない!?きっと人生楽しいだろうなあ。
更紗
マレーシアが3位でちょっぴり嬉しい…。

 

本書ではこうした「不愉快な事実」を出発点として、「日本人の働き方はこれからどうなっていくのか?」「急速に変わりつつある世界でどのように生き延びればいいのか?」を考えていきたいと思います。

※本書では、年功序列・終身雇用の日本型雇用の下で働いている人たちを、女性を含め「サラリーマン」と呼び、グローバル企業で働く「ビジネスパーソン」と区別しています。

【組織に所属しない】未来の働き方

アメリカでギグワーカーが増えた理由

19世紀であれば、アメリカのロックフェラーやモルガン、日本の三井・三菱など、一旦市場を独占した財閥は100年を超える長期の繁栄が約束されました。

しかしアメリカの会社(S&P500)の平均寿命はどんどん短くなっており、1960年には約60年だったのが今日では20年にも満たず、アメリカを代表する100社のうち創業100年を超えているのはたった11社しかありません。

「人生100年時代」では従業員より先に会社が寿命を迎えるのです。

更紗
S&P500は、米国企業を幅広く代表する約500の企業が採用されている株価指数です。私の投資先でもあります!アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドットコム、アルファベットクラスA、テスラ、アルファベットクラスC、メタ・プラットフォーマーズなど、そうそうたるメンバーが揃っています。
こんなににすごい企業が集まっているのに、平均寿命が短くなっているなんて驚きだね。時代の変化のスピードがそれだけ早いということなのかな。

その背景には、テクノロジーの性能爆発=スーパーノバ(超新星)があります。

指数関数的に向上するテクノロジーと比べ、人間の適応能力は一次関数的にしか向上しません。

テクノロジーが人間の能力を超えつつある時代には、私たちの働き方も大きく変わらざるを得ません。

そんな中、シリコンバレーを中心に、アメリカでは急速に「組織に所属しない働き方」が広がっています。

こうした働き方は「ギグ(Gig)」と呼ばれています。これは元々、ジャズミュージシャンなどがライブハウスで気の合った仲間と演奏することです。

公式な統計はないものの、様々な機関の推計では労働人口の16%~29%がギグエコノミーに関わっています。アメリカの労働人口は3億3000万人ですから、最大で1億に近い人々が会社に所属せずに働いているのです。

フリーエージェント化=ギグ化が進むのは、会社側と労働者側にそれぞれ理由があります。

会社側の事情としては、第一にコスト(人件費)削減です。

アメリカは公的年金や国民医療保険の制度がない代わりに、会社が従業員に年金・保険を提供しなければなりません。

有給休暇、医療保険、退職年金などを加えると会社側の負担は人件費の32~37%を占めるとされ、フリーランスに仕事を発注すればこうした福利厚生が不要なので、社員の20%増しの報酬をギグワーカーに支払ったとしても十分元がとれるのです。

もうひとつは、ビジネス環境が急速に変化する中で、素早く人材を補充しなくてはならなくなったことです。

新しい部署に合わせて社員を再教育するよりその仕事に適した人材を労働市場から調達した方が簡単だし、その仕事もいつまで続くか分からないので、その度にいちいち退職手続きをとるよりも最初から契約期間を決めておいた方が都合がいいのです。

ジャスト・イン・タイム(カンバン方式)は日本から生まれたグローバルスタンダードで、生産工程において全ての部品を適時適量に調達して生産性を最大化することを目指しますが、ギグエコノミーではビジネスに必要な人材をジャスト・イン・タイムで採用するのです。

それに対して、労働者は何故ギグ化するのでしょうか?

インディペンデント・ワーカーへの調査によると、47%が「元の雇用主に自分の価値を分かってもらえなかったこと」が独立に踏み切る要因になったと答えています。

アメリカでも日本と同様、会社(人事)への不満は大きく、「自分の運命を自分でコントロールできる」という独立の動機は日本のサラリーマンにもよく理解できるでしょう。

ギグエコノミーはあらゆる年齢層に広がっていますが、中心にいるのは1980年代と90年代に生まれたミレニアム世代で、約40%を占めています。

現在30代から40代のミレニアム世代の特徴は仕事よりも生活を楽しもうとする傾向が強いことで、金融危機(リーマンショック)のさなかに成人したこともあって会社(長期雇用)を信用せず、90%が「ひとつの職場に3年以上留まるつもりはない」と考えています。

更紗
私もミレニアム世代なんですよね。「ひとつの職場に3年以上留まるつもりはない」とまでは思いませんが…優秀な人ほど転職を繰り返すアメリカならではでしょうね。

【労働やスキルをシェア】ギグエコノミーの光と影

シェアリングエコノミーは、民泊のエアビーアンドビー(Airbnb)のように、インターネット上のプラットフォームを通して使っていない資産(場所、乗り物、空きスペースなど)を個人間でシェアすることです。

ギグエコノミーはその一種で、労働やスキルをシェアします。

ライドシェアサービス、ウーバー(Uber)のドライバーがその典型で、タクシー会社に所属せずに、空いた時間に自分の車と(ドライバーの)スキルをシェアして収入を得ることを可能にしました。

このようにギグエコノミーの背景には、サービスを提供したい側と、サービスを受けたい側をマッチングさせるテクノロジーの登場があります。

人材斡旋会社の調査では、フルタイムで働くインディペンデント・ワーカーのほぼ半数が、会社員時代よりも収入が増えたと答えています。

専門人材のマーケットには3980万人が参加しており、年収10万ドル(約1100万円)以上は290万人で、その平均年収は19万2000ドル(約2100万円)です。

フリーになったからといって収入が減るわけではなく、高所得グループの人数は年7.7%のペースで増えているといいます。

医師の場合も、フリーランスの方が収入良かったりするよね。

もちろん、人材プラットフォームに登録しておけば自動的にいい仕事が紹介されるわけではなく、一定の資格や評価がないと登録すらできないこともあります。

ビジネスで使われるのはフェイスブックよりビジネス特化型SNSのリンクトイン(LinkedIn)で、そのプロフィール(学歴・資格・職歴)や友達のネットワークは必ずチェックされ、ツイッター(Twitter)(現:X)での発言やフォロワー数も重要になります。

独立すれば会社の看板で営業することができないのですから、よいクライアントと出会うためには「評判経済」の中で自分のブランドを確立しなければなりません。

ギグエコノミーでは自分の評判=ブランドが全てなので、20代の頃から、あるいは高校生や大学生の頃から、SNSでの評判を自覚的に作っていかなくてはなりません。

フェイスブックやツイッター(現:X)での不用意な発言や写真はいつまでも記録され、思いもかけない時に評判を傷つけるかもしれないのです。

このようにギグエコノミーには光と影がありますが、もはやこの潮流を押しとどめることはできません。

それは、会社はもう社員を雇いたいと思っていないし、労働者も会社に束縛されたくないと思っているからです。

両者の利害が一致して「ギグ化」が進んでいくのです。

更紗
医師の中でも、SNSの発信でセルフブランディングしている人が多くいらっしゃいます。皆さんその重要性を分かっているんですね。

ブロックチェーンを用いた「未来の」ギグエコノミーとは?

ギグエコノミーへの評価は分かれており、「体のいい低賃金労働者を増やすだけ」との根強い批判もあります。

当初は自由な働き方に大喜びしたウーバードライバーが、自己負担のガソリン代、車の維持・修理代、保険料、ウーバーへの手数料を差し引くと手元に何も残らないことに気付き、待遇改善を求めて抗議したら契約を解除されたなどのトラブルが報じられています。

しかしその一方で、ギグエコノミーへの期待や礼賛の背後には、サイバー・リバタリアン(テクノロジー・リバタリアン)の理想主義があることを押さえておく必要があります。

シリコンバレーで“テッキー”とも呼ばれるこの人たちは究極の「リベラル」で、自由で自立した個人が自らの意思と自己責任で共同作業(コラボレーション)を行う社会を理想とし、

労働者を会社に所属させて「支配」したり、管理職がクリエイターを「管理」したり、仲介業者が多額の取引手数料を中抜きして「搾取」することをことのほか嫌います。

そして、テクノロジーの驚異的なパワーを使えば、管理職や仲介業者だけでなく会社すらもこの世界から「駆逐」できると考えるのです。

究極のシェアエコノミーでは、ブロックチェーンを使った書き換え不能の契約(スマートコントラクト)でアプリが開発され、ウーバーのような仲介業者を介さずにドライバーと顧客が直接繋がることができます。

ドライバーや顧客の評価も可視化されており、価格と相手の評価を見てオファーを受けるかどうかを「自己責任」で決めるようになります。

仲介業者を排除しているため、顧客はより安い料金でタクシーを利用でき、ドライバーの報酬はより多くなります。

こうしたスマートコントラクトの仕組みを企業活動に使うのが、オープンネットワーク企業(ONE)です。

そこでは在庫管理や生産管理がブロックチェーン上で行われ、足りない部品があれば世界中からサプライヤーを検索して値段と納期を比較し、契約から支払いまで自動化できます。

こうして会社の内側と外側の区別は曖昧になり、オープンなネットワークが生産性を大幅に向上させ、より少ない労力で大きな価値を創造できるようになると期待されています。

自律エージェントは、こうした一連の作業を人の手を介さずに行うロボットで、企業活動を自動化するだけでなく、自動運転車で街を周回し、乗客を目的地まで送り届けて適切な支払いを受ける「無人タクシー」などが想定されています。

スマートコントラクトによって外部と取引するコストがどんどん安くなれば、大きな会社を維持することが割に合わなくなることは間違いありません。

テッキーが夢見るテクノロジーの楽園では、会社は最小限まで縮小し、最後はソフトウェアと資本だけが残るのです。

このように私たちは、否応なく「未来世界」に向かって突き進んでいます。

そこでは働き方はもちろん、生き方(人生設計)そのものが根本的に変わってしまいます。

更紗
医師の転職も、いずれ転職エージェントを介さないようになりそうですね。アプリ上で登録医師の評判や能力が☆の数で可視化され、それを見て病院が直接引き抜くとか。

クリエイター、スペシャリスト、バックオフィスの区別

組織に属す働き方、属さない働き方

ここでクリエイター、スペシャリスト、バックオフィスについて説明しておきましょう。

クリエイターというのは、「クリエイティブ(創造的)」な仕事をする人で、スペシャリストは「スペシャル(専門)」なものを持っています。

それに対してバックオフィスは「事務系」の仕事です。

それらの一番の違いは、会社に属しているか、属していないか、です。

クリエイターというと芸術家を思い浮かべるでしょうが、プロスポーツ選手やベンチャー起業家も含まれます。

そうやって範囲をどんどん広げていくと何がクリエイティブか分からなくなってしまいそうですが、日本でも世界でも彼らには際立った特徴があります。

それは「会社員ではない」ことです。

それに対してバックオフィスは、非正規やパート、アルバイトなど雇用形態に違いはあっても、全員がどこかの組織に所属しています。

事務系の仕事というのは、その「事務」を発注して管理する会社がないと成り立たないのです。

スペシャリストはこの中間で、組織に属さずに仕事をする人もいれば、どこかの組織に属している人もいます。

典型的なのは医者で、自分の病院を持てば「開業医」、どこかの大きな病院で働けば「勤務医」と呼ばれます。

弁護士や会計士・税理士、プログラマーやコンサルタント、トレーダーなどにも、組織に属している人と属していない人がいます。

組織に属していないクリエイターやスペシャリストは、「フリーエージェント」「インディペンデント・ワーカー」と呼ばれます。

要するに自営業者のことで、ここまでは世界共通ですが、スペシャリストとバックオフィスの扱いでは日本と世界は大きく異なります。

今は欧米だけでなく中国なども含め、「外資系」の会社では、組織の中でスペシャリストとバックオフィスがはっきり分かれています。

それに対して日本では、バックオフィスの仕事は主に非正規という「身分」の労働者が行っていますが、正規の「身分」の労働者、すなわち正社員の中にもバックオフィスの仕事をしていて、混然一体となっています。

そのうえ正社員の中で、誰がスペシャリストで誰がバックオフィスなのかもよく分かりません。

雑用に忙殺されている臨床医もこれに当てはまるかも…。

拡張可能な仕事、拡張できない仕事

では次に、この3つの仕事を別の角度から見てみましょう。

映画俳優と演劇の俳優はどちらも同じような仕事をしていますが、映画はクリエイター、演劇はスペシャリストの世界です。

これは、その仕事が「拡張」できるかどうかで決まります。

テクノロジーの進歩によって、あらゆるコンテンツが極めて安価に(ほぼゼロコストで)複製できるようになりました。

大ヒットした映画は、映画館、テレビ、DVD、インターネット配信など、様々なメディア(媒体)によって世界中に広がっていきます。

ネットの配信に上限がないということは、富にも上限がないということです。

映画と同様に、本、音楽、ファッション、プロスポーツ、検索、SNS、プログラムも拡張可能な世界です。

それに対してバックオフィスは時給計算の仕事ですから、収入は時給と労働時間で決まり拡張性は全くありません。

時給1000円の仕事を8時間やれば8000円で、それ以上にもそれ以下にもなりません。

それ以外にも、拡張性のない仕事は色々あります。

演劇は確かにクリエイティブな仕事ですが、その収入は劇場の規模、料金、公演回数によって決まります。

大評判になれば連日満員でしょうが、それ以上利益は増えませんから、富を拡張するには広い劇場に移るか、公演回数を増やすしかありません。

このように考えると、医師や弁護士、会計士などの仕事も拡張性がないことが分かります。

テレビドラマに出てくる天才外科医は1回の手術料がものすごく高いかもしれませんが、手術件数には物理的な上限があるので、富が無限に拡張していくことはありません。

クリエイティブな仕事をしていても、クリエイターは拡張可能で、スペシャリストは拡張不可能です。

更紗
うーん、クリエイターが羨ましい(笑)。

このように言うと誰もがクリエイターに憧れるでしょうが、成功するのはごく一部と言う厳しい世界で、タダ働き(時には持ち出し)になることもあります。

それに対してスペシャリストは働けば必ず収入が得られます。ただしそれに伴って、責任も大きくなっていきます。

だからこれは、どちらが良くてどちらが悪いということではありません。

共通するのはクリエイティブな仕事をしていることですから、クリエイターとスペシャリストを合わせて「クリエイティブクラス」とします。

それに対してバックオフィスは、仕事の手順がマニュアル化されておりクリエイティブなものはほとんどありません(だから「マックジョブ」)とも呼ばれます。

その上時給は、スペシャリストに比べて大幅に低くなっています。

マクドナルドの業務は細部までマニュアル化されており、「マックジョブ」の語源になっています。

だったらバックオフィスの仕事には何の魅力もないのかというと、そんなことはありません。

その一番の特徴は「責任がない」ことです。

マニュアル通りにやるのが仕事なのですから、それによって何かとんでもなく酷いことが起きたとしても、責任を取るのはマニュアルを作った会社(経営陣)でバックオフィスの労働者ではありません。

世の中には、労働は生活のための単なる手段で、余った時間を趣味に使いたいという人が(かなりたくさん)いますが、そんな彼ら/彼女たちにぴったりの仕事です。

バックオフィスのもうひとつの特徴は、マニュアル通りに仕事ができさえすれば、高齢者や障がい者でも、外国人でも、働き手は誰でも構わないことです。

バックオフィスの会社は、社会から差別され排除されている人に仕事を提供するというとても大事な役割を果たしています。

更紗
どんな仕事にも役割と価値があるんですね。私は子どもが生まれてからマクドナルドに大変お世話になっているので、マクドナルドで働いている皆さんを尊敬しています!

【収入ピラミッド】6つに階層化する働き方

この3つの働き方の区分は今でも有効だと思いますが、グローバル化、知識社会化で先行する欧米を見ると、そこにはっきりしたヒエラルキーができつつあることが分かります。

本書図表13「6つに階層化する働き方」より作成
本書図表13「6つに階層化する働き方」より作成

頂点にいるのは資本家ですが、グローバル資本主義では、その多くは親の事業や財産を受け継いだのではなく、起業によって莫大な富を手にした人たちです。

彼らは数百億円、数千億円、あるいは数兆円相当の株式を保有しており、その配当から巨額の収入を得ています。

ファットFIREをした人って、こういう人たちなんだろうね。
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その下にいるがクリエイティブクラスで、(成功した)クリエイターと高報酬のスペシャリストから構成されています。

この階層ではフリーエージェント化が進んでいますが、スペシャリストの多くは未だに会社に所属しています。

とはいえ、彼ら/彼女たちはプロスポーツ選手のような感覚で仕事を選んでいます。

更紗
医師はここに該当しますね!

クリエイティブクラスはニューリッチ(新富裕層)で、BOBOS(ボボズ)とも呼ばれます。ブルジョア(Bourgeois)とボヘミアン(Bohemian)を組み合わせた造語です。

典型的なBOBOSは夫婦とも高学歴で、リベラルな都市からその郊外に住み、経済的に恵まれているもののブルジョアのような華美な暮らしを軽蔑し、かといってヒッピーのように体制に反抗するわけでもなく、最先端のハイテク技術に囲まれながら自然で素朴なものに最高の価値を見出すとされています。

クリエイティブクラスの上位層は生きていくのに必要な額を大きく上回る資産を形成していて、働くのは自己実現あるいは社会貢献のためです。

更紗
サイドFIREをした人たちはきっとこの辺ですね〜。

クリエイティブクラスの下には、複雑化する一方の市場参加者の利害関係の潤滑油となる「管理職」が位置します。

彼ら/彼女たちは専門職として相応の報酬を得ていますが、形のあるものを生み出しているわけではなく、仕事の内容があまりに細分化されたこともあって「ブルシット化」しています。

ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。
デヴィッド・グレーバー

将来的にも、会社に所属して働く人の多くがここに含まれるでしょう。

ブルシット・ジョブの定義が厳しいね。あんまりやりたくないね(汗)。

管理職の下に位置するのがバックオフィスで、組織に所属しながらマニュアルに従った仕事に従事しています。

その仕事の性質上、この層は機械との競争に真っ向から晒される可能性が高く、男性労働者が従事していた製造業などでは雇用の喪失が加速度的に進んでいます。

それに対して女性が優位性を持つ看護師・介護士など共感を必要とする仕事(感情労働)は機械との共存が可能で、その結果アメリカでは、ピンクカラー(女性が主体の仕事)の平均給与がブルーカラー(製造業)を逆転しました。

これからは女性が働き、男性が扶養される家庭も増えてくるでしょう。

更紗
機械化・AI化が進む現代では人間らしい仕事が残っていくと、『LIFE SHIFT 2』でも言われていましたね。医師もその「人間らしい仕事」に含まれていました。
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皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。突然ですが、皆さんは100年時代を生き抜く準備を実践していますか?過去記事で『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』(著:リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット、訳:池村千秋[…]

バックオフィスの下にはギグワーカーが位置します。

ウーバーのドライバーが典型ですが、かつては組織(タクシー会社)に属して働いていた人たちが、テクノロジーの進歩によ
って顧客と直接繋がるようになり、フリーエージェント化してきました。

ギグワーカーの仕事は低スキル・低賃金で、機械(自動運転車)だけでなく移民とも競合するため、「底辺への競争」に晒されています。

アメリカの所得分布を基におおよその年収を示しておくと、ギグワーカーが年収300万円以下、バックオフィスが年収300万円~500万円、「管理職」が年収500万円~1500万円、クリエイティブクラスのうち組織で働くスペシャリストが1500万円~3000万円、フリーエージェントとして仕事ができるだけの専門性・クリエイティビティを持つ層が3000万円超、資本家は株式の配当などで最低でも年収3億円超になるでしょう。

こうした働き方の階層化は知識社会化・グローバル化の必然なので、欧米だけでなく日本もいずれ社会の大規模な再編が避けられません。

その時に何が起きるかはまだ分かりませんが、ひとつだけ確かなことがあります。

「前近代的な身分制」の産物であるサラリーマンは、バックオフィスの一部、中間管理職、スペシャリストの一部が混然一体となった極めて特殊な「身分」です。

こうした働き方はグローバルな雇用制度では存在する余地がありません。

あと10年もすれば、サラリーマンは確実に絶滅することになるのです。

医師というスペシャリストであっても、勤務医とか産業医とかサラリーマン的な働き方は続かないということなのかな。
更紗
この本は2019年に発行されたので、そこから10年後というと…あと6年くらいしか余命がありません(泣)。まあ、さすがに絶滅はしないでしょうけどね。

「未来世界」で生き延びる方法

全ての人がモチベーションで差別される

世界は急速に「未来」に向かっているにも関わらず、日本人(サラリーマン)の働き方は相変わらず前近代的な「身分制」に囚われたままです。

この気の遠くなるような矛盾が私たちの直面している現実なのですが、そんな世界をどのように生き延びていけばいいのでしょうか。

『LIFE SHIFT ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』(出版:東洋経済新報社)のリンダ・グラットンは、「技術が進化すれば、人間も変わらなければいけません。技術についていくために、また人間にしかできない仕事をするために、学び続けるのです」と述べています。

「AIの時代に生き延びるために機械を超える能力を獲得しろ」と私たちを叱咤激励しているのです。

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しかし、こんなことが本当に可能なのでしょうか。

更紗
皆さんも想像してみてください。これからコーディングを勉強して、IT企業でデジタルネイティブの若者たちと机を並べてエンジニアの仕事ができるようになるでしょうか。
普通に考えて無理だね!(きっぱり)

現実に、「加速する時代」が要求する職業スキルを獲得できない人たちがいるのです。

認知科学の領域では、知能は(かなりの程度)遺伝するという膨大な知見が積み上がっていますが、原理主義的なリベラルは、「肌の色以外は人間はすべて平等であるべきだ」というPC(政治的正しさ)に固執しているため、この事実を受け入れることができません。

生得的な知能の差を無視してこれを説明しようとすると、残された理由はひとつしかありません。「やる気がない」です。

何故なら、全てのことは「やればできる」はずですから。

人を知能によって差別してはならないとするリベラルの理想世界では、全ての人がモチベーション(やる気)によって差別されることになります。

デジタル・デバイドが解消されれば、次にやってくるのはモチベーション・バイドです。

強大なテクノロジーを手にしたリベラルが理想を追求すれば、「やってもできない」人間は生涯学習の「社会契約」に違反したとみなされ、自己責任で社会の最底辺に突き落とされるグロテスクな未来が到来することになるのです。

更紗
すっごく身も蓋もない…!

「好きなことで生きていく」しかない残酷な世界

「人生100年時代」に最も重要なのは、好きなこと、得意なことを仕事にすることです。

嫌いな勉強を1世紀も続けることなど誰にもできませんが、好きな事や得意なことならいくらでもできるからです。

「好きなことで生きていく」と言うと、「そんな甘いことが通用するはずがない」という批判が必ず出てきます。

そのように言う人は、労働とは生活のための必要悪であり、「苦役」であると考えています。

しかしそうなると、人生100年時代には、20歳から80歳までの少なくとも60年間、労働という苦役をやり続けなくてはならなくなります。

更紗
筆者の橘さんは、「こんなことができる人間がいると考える方が荒唐無稽としか思えません」と仰っています。

人生100年時代には、原理的に、好きなこと、得意なことをマネタイズして生きていく他ありません。

もちろん、全ての人がこのようなことができるわけではありません。

だから橘さんは、これを「残酷な世界」と呼んでいるのです。

【会社→個人の流れ】ギブすることで個人の評判を高めよう

こうした新しい働き方では、一体何が重要になるのでしょうか。

それは「評判」であり、キーワードは「ギブ」です。

一般論としては、「奪う(テイク)」よりも「与える(ギブ)」方が道徳的に優れていると誰もが同意するでしょう。

しかし、手元にあるお金を全てギブしてしまえば無一文になってしまうし、食べ物をギブすれば餓死してしまいます。

このことから、「有限のものを無制限にギブすることはできない」という第一の原則が導き出せます。

これは極めて冷酷な原理ですが、それでも例外はあります。

無限にあるものならいくらでもギブできるのです。

どれほどギブをしても減らないものなどあるのでしょうか?

実は、そんな特別なものがこの世に2つだけあります。それが「知識」と「人脈」です。

ギバーは、自分が持っている知識や人脈を惜しげもなく色んな人たちと共有するのです。

あと、「愛」もかな…。

もうひとつ、重要な原則は「ギブできるのは自分が持っているものだけ」ということです。

「そんなのは当たり前だ」と思うかもしれませんが、サラリーマンがビジネスの世界でギブしているのは、「うちの会社が発注します」「うちの会社が投資します」というように、会社の資源です。

こうしたリソースは個人に属しているわけではないので、定年で会社を退職したり、異動で部署が変わってしまうとギブできるものがなくなってしまいます。

何ひとつギブできるものを持っていない人と付き合っても、あまり良いことがありません。

この単純な理由から、会社を辞めた途端に多くのサラリーマンはビジネスの世界から脱落してしまうのです。

更紗
どんなに会社で地位を築いても、「会社辞めたらただの人」とか言いますもんね…。医師も、病院の看板に頼らず、個人で「知識」と「人脈」を築く必要がありますね。
ギブすることが何故重要なのか?このことはネットワーク理論からも説明できます。
周りの人たちにギブする知識や人脈をたくさん持っている人は、それを利用してネットワークのハブになることができます。
そして、情報と同様に富もハブに集まってきます。何故なら情報(知識)社会において、情報と富は同じものだから。
高度化するネットワーク社会で起きているのは、「会社から個人へ」という大きな流れです。
そこでは「大きな会社」に所属していることではなく、個人として良い評判を持っていることが成功のカギを握っています。
ネットワークの中で良い評判を獲得する最も確実な方法は、自分の知識や人脈を惜しげもなくギブすることです。
自分がギブした人の中から新たな成功者が生まれれば、関係は更に強くなります。
そうやってネットワークがより大きく広くなって、それが自然に富に繋がっていくのです。

どこでも働ける人になろう

日本の会社が競争に負けたとしても、世界に会社はたくさんあるのですから、そこで働くか、フリーエージェントとして生きていけばいいだけのことです。
大事なのは自分の人的資本を労働市場に効率的に投資して富を獲得することで、給料はどこの国の会社からもらっても同じです。
それ以前に、グローバルなIT企業(プラットフォーマー)は多様化が進んで、国籍をほとんど意識しなくなっています。
医師は、今の病院で働けなくなっても、いくらでも働く場所あるよね。フリーエージェント化しやすい職種で、恵まれているよね。
Name
ただ、「日本国内で働けない」状況では困難に直面する人が多いと思います。もちろん海外で活躍している日本人医師はいますが、新たな資格が必要だったり、言語の壁が存在しますから。
日本に生まれ育った以上、日本が豊かで幸福な国になれば嬉しいことは言うまでもありません。
しかし本当に重要なのは国の勝ち負けではなく、自分と家族が幸福に生きられるかどうかです。
本当にそうだよね。最近、世界各地で戦争が起こっているけど、バカげているよ。

まとめ 未来世界での医師の生存戦略とは?

医師であれば、総合病院やクリニックのような組織に所属して働くことは、全然悪いことではありません。

しかしいずれ、皆さんが所属する組織が時代の流れに乗り切れず、皆さん自身が組織に所属する働き方に限界を感じる可能性は十分にあります。

なので、医師であっても「組織に所属しなくても生きていけるように」、つまり「フリーランス医師として生きていけるように」、日頃から自身の知識・スキル・評判・人脈を磨いていく必要があるように思います。

そして、天変地異・戦争・自身の病気・日本国内の労働市場の激変などにより、「日本国内で医師として働くことが難しくなる」ことも想定しておくべきだと、私は思います。

考え過ぎと言われることは承知の上ですが、それらは全て世界中で・私たちの周囲で既に起こっていることです。決して他人事ではありません。

言い換えると、「日本国外で医師として生きていく」や「医師以外の仕事で生きていく」こともできるよう、備えをしておいた方が良いと思います。

著者の橘さんが仰った通り、「自分と家族が幸福に生きられる」ことこそが最も重要です。

皆さんがご家族と幸福に生きられる、そんな働き方を見つけていきましょう。

私もそれを模索している一人です。一緒に頑張りましょう!

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