皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。
前回の記事【医師の偏在①】では、医師の偏在問題のうち「地域の偏在」を取り上げました。
<医師の偏在>
- 地域の偏在
- 診療科の偏在
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。皆さんは、現在「全国に医師が何人いるか」ご存知ですか?更紗私が医師になった頃は、ちょうど30万人くらいでしたね。医師不足が深刻だから、医師数をどんどん[…]
とくれば当然、今回の記事【医師の偏在②】のテーマは「診療科の偏在」です!
2024年3月19日、厚生労働省は「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計」の結果を公表しました。
この調査結果から、医師数について下記のようなデータを得ることができます。
- 施設・業務の種別にみた医師数
- 医療施設に従事する医師数
1) 性・年齢階級別にみた医師数
2) 施設の種別にみた医師数
3) 診療科別にみた医師数
4) 取得している広告可能な医師の専門性に関する資格名、麻酔科の標榜資格及び医師少数区域経験認定医師(複数回答)別にみた医師数
5) 都道府県(従業地)別にみた人口 10 万対医師数
これによると、令和4年 12 月 31 日現在における全国の届出「医師数」は 343,275 人で、前回調査(令和2年)と比べると3,652 人(1.1%)増加しています。
また、若手医師を育てるには上級医の存在が必要不可欠ですが、特定の診療科ではもはや上級医すら不足している状況にあります。
若手医師が一人前の医師になるには長い年月がかかります。
今すぐに強力な「診療科の偏在」対策を取らないと、取り返しがつかないことになると、私は危惧します。
【医師の偏在】診療科の偏在〜グラフでみる診療科別医師数の変化
【NHK】手術まで数か月待ち。休診続きで医療が受けられない。命に関わる医療が危機に直面しています。医師数は増加傾向にある…
ここから分かることは、2002年と比べて、美容外科の医師数は4.3倍、救急科は2.3倍、麻酔科は1.7倍、精神科は1.43倍…と増加傾向なのに対し、
消化器・一般外科は0.79倍とむしろ減少傾向にあるということです。
実はここ20年ほどの間は、グラフに表記されていない他の診療科も全て、医師数増加傾向なんです。(医師総数が増えていますからね)
それなのに、かつての華形だった外科が一人負け…というこの状況。
一体何故なんでしょうか?
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。今回は、「専門医資格の選び方シリーズ」の第1回目、臨床系専門医についてです。本当は「単純に好きなところを選びなよ!」と言いたいのですが、私の周りには「この専門を選んで[…]
【医師の偏在】診療科の偏在〜なぜ小児科と産婦人科は大変なのか?
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。皆さんは、現在「全国に医師が何人いるか」ご存知ですか?更紗私が医師になった頃は、ちょうど30万人くらいでしたね。医師不足が深刻だから、医師数をどんどん[…]
【小児科・産婦人科の医師不足】女性医師の割合が大きい
【小児科・産婦人科の医師不足】周産期医療の分業化・ハイリスク化
産婦人科と一言で言っても、主に4つの分野に分かれています。
<産婦人科の4分野>
- 周産期医学(産科)
- 婦人科腫瘍学
- 生殖医学
- 女性医学
4分野全てを診察する産婦人科医ももちろんいますが、昨今は分業化が進んでおり、労働条件の良い生殖医学や女性医学を専門とする産婦人科医が増えています。
また不妊治療の普及も相まって高齢出産の増加・妊娠時の偶発合併症の増加など、周産期医療のハイリスク化を招いており、
これらはそのまま、新生児医療に携わる小児科医へのリスクにもなり得るのです。
【小児科・産婦人科の医師不足】内科医が小児を診察することについて
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。皆さん、『月刊!スピリッツ』で連載中のマンガ『処方箋上のアリア』(著者:三浦 えりか、出版:小学館)はご存知ですか?[caption id="attachment_580" align=[…]
【医師の偏在】診療科の偏在〜現在の対策「シーリング」とは?
「診療科の偏在」対策として既にスタートしているのが、シーリング制度です。
シーリング制度は、新専門医制度において地域のみならず専攻医採用数に上限を設けるというもの。
つまり、今後新専門医制度を利用して専門医資格の取得を目指す人は、自分が働きたい地域・診療科で研修を受けられるとは限らないのです。
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。皆さんの中には、これから専門医資格の取得を目指す方もいらっしゃるかと思います。そういう方は、新専門医制度に対して、少なからず不安な気持ちを抱いているのではないでしょうか。というの[…]
【医師の偏在】診療科の偏在〜現在の対策「地域枠の指定診療科枠」とは?
前回の記事で「地域の偏在」対策として挙げた「地域枠制度」。
一般的な地域枠制度には診療科の指定はありませんが、あらかじめ診療科を指定した「指定診療科枠」というものを設けている医学部も存在します。
一例を出しますと、横浜市立大学医学部医学科には、下記の3つの募集枠が用意されています。
<横浜市立大学医学部医学科の3つの募集枠>
- 一般枠(普通の医学生):地域指定なし、診療科指定なし
- 地域枠(一般的な地域枠):地域指定あり、診療科指定なし
- 神奈川県指定診療科枠:地域指定あり、診療科指定あり
ちなみに、神奈川県指定診療科枠の指定診療科とは、神奈川県内で特に不足している8診療科(産科、小児科、麻酔科、外科、内科、救急科、総合診療科、脳神経外科)のこと。
医学部入学時点で、「卒業後は神奈川県で産科として働きます」「卒業後は神奈川県で小児科として働きます」と契約しなければならないのです。
これは神奈川県としてはかなりの安心材料になります。
【医師の偏在】診療科の偏在〜新たな対策「強力な働き方改革」
医師不足にあえいでいる診療科の権威ある人が、未だに「医師の使命感・誇りを伝える」程度の対策しか考えられないのだとしたら甘すぎます。
医師不足の診療科は、共通して労働条件が悪いというマイナスポイントがあることを、まず認識するべきです。
ならば当然、他の科を圧倒するほど労働条件を改善しなければならない。
今こそ強力な働き方改革を遂行するべきです。
もちろん、国レベルでの医療機関の再編・集約化も必要不可欠ですし、
先の対策等で診療科の医師数を増やしていくとして、その医師が育つまでまだまだ時間とお金がかかります。
けれども、各医療機関主導で下記のような労働環境を整えることは、比較的早期にできるのではないでしょうか。
<望まれる労働環境の一例>
- 報酬を高くする
- 常勤医は定時帰宅を死守する
- 当直・休日日直はバイト医に任せる
- 主治医制ではなくチーム制
- 業務のマニュアル化(PHSでの相談を減らす)
- タスクシフト、タスクシェアリング(他の医療職に任せる・分業してもらう)
- 手術など時間がかかる業務は複数医師で回す
今この時も、医師不足の診療科でふんばっている臨床医の皆さんがたくさんいます。
その人たちを失わないためにも、どうか、各医療機関には強力な働き方改革の徹底をお願いいたします。
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。「医師のより良い働き方を考える」当ブログが決して無視出来ない案件がひとつ…そう、「医師の働き方改革」です。2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用されるんだ[…]
【医師の偏在】診療科の偏在〜新提案「敢えてAIに仕事を淘汰される」
皆さん、「医師の仕事はAIに取って代わられる」と言われたら、どう感じますか?
『21 Lessonsー21世紀の人類のための21の思考』(著:ユヴァル・ノア・ハラリ、訳:柴田裕之、発行:河出書房新社)
ここでは、医師の仕事がAIに取って代わられ、医師が大量に失業する時代がやってくることが書かれています。
特に淘汰される可能性が高いとされている医師の仕事は、下記の通り。
<AIに淘汰される可能性が高い医師の仕事>
- 手術も手技も少ない診療科
- 一般開業医
どうでしょう…人気の診療科である精神科や、「何でも診れる」と重宝されてきた一般開業医が、仕事を失う未来がすぐそこに迫ってきているのです。
私は医師という職業が消失するとは思いませんが、大半の業務内容やいくつかの診療科は消失すると考えています。
「それにより余った医師が、医師不足の診療科に流れる」構図を作り出せるのだとしたら、
現在の「診療科の偏在」は、私たちが思っているよりも早期に解消するのかもしれません。
「AIに仕事を淘汰される」ということをネガティブに捉える方も多いと思いますが、
ここは敢えて淘汰されるのが解決策になるのではないか、という提案をさせていただきました。
↓ 『21 lessons』の内容は当ブログの過去記事でも解説しています ↓
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。皆さんは、知の巨人とも呼ばれるユヴァル・ノア・ハラリ氏をご存知でしょうか?彼はイスラエルの歴史学者・哲学者です。圧倒的な情報量と分析力で、これまで著作累計世界2000万部を突破するベスト[…]
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。お待たせしました、今回は久々に「テクノロジー」カテゴリの記事です!当ブログは「医師の自由な働き方を応援する」というコンセプトですが…私は、独学でweb3や生成AIなどの最新テクノロジーに[…]
まとめ AIは医師の「診療科の偏在」対策になるか
「診療科の偏在」対策の現状、国の対策、AIの活用について見てきました。
明るい未来が見えない医師の「診療科の偏在」…この状況を打破できるのが、もしかしたらAI技術なのかもしれません。
多くの診断・検査・治療がAIの判断で自動で行われるようになったとしたら、世界中で手術・手技がない診療科は淘汰されるということが起こり得ます。
その後も残る医師の仕事は、手術・手技がある診療科に集約されることになるでしょう。
となると、現在医師不足に苦しんでいる外科にも再び人が流れてくる可能性が高いです。
しかしその時には当然、外科医の働き方改革が徹底されていることが前提です。
医療現場でAIを活用するためにはシステム構築・法整備などが必要で、体制が整うのはまだ先の話かもしれませんが、
国には、AIの導入に遅れを取らないようにお願いしたいものですね。
私はAI技術が医師の労働環境を改善し、明るい未来を創造してくれること、大いに期待しています。
では、また!
「医師を辞めたい」過酷な労働環境で、誰もが一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。 もしもあなたが、今まさに「医師を辞めたい」と考えているのだとしたら。私は「どうぞ、いつでも辞めていいですよ[…]
皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。働き方に悩んでいる皆さん、転職活動していますか?当ブログは「働き方に悩んでいる臨床医」を対象に始めた「医師転職ブログ」なので、当然、これまでオススメ医師転職サイトの紹介もしてきました。[…]