【働くみんなの必修講義!】『転職学』まとめ

  • 2022年9月14日
  • 2024年10月21日
  • 読書

皆さんこんにちは、更紗(さらさ)です。

突然ですが、皆さんは、転職について学んだことがありますか?

殆どの人は、そんな機会無いよねえ。日本では転職ってタブー視されているからね。

そうですよね。

日本の医療界の上の世代は、未だに「最初に乗ったレールの上を走り続けるべし」という古い観念に囚われているように思います。

しかし、これからの時代は、転職をしない人の方が少数派であり、誰もが転職について学ぶ必要があります

さて、今回の記事は『働くみんなの必修講義 転職学』(著者:中原 淳・小林 祐児、出版:KADOKAWA)の紹介です。

更紗
すみません、転職ブログをやっているくせに、転職学の講義受けていませんでした。

この本は、離職、転職、そして新たな組織への定着という「転職にまつわる一連のプロセス」を科学的に探求した本です。

一日の内でも長い時間を占める仕事を充実させることは、人生の充実にも直結します

今回の記事を読むことで、働き方に悩んでいる方も、転職という選択肢を得て自由に働けるようになると思います。

是非ご一読ください。

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オリエンテーション:人生100年時代では、転職が当たり前

「人生100年時代」という言葉が広まったように、私たちはこれまでよりも長い仕事人生を送ることになると思われます。

その一方、急激なIT化やいわゆる「サービス産業化」などによって、ビジネスの変化のスピードが、以前よりもはるかに速くなっています。

そこで変化についていくためには、常に知識やスキルを高め、成果を出していかなければなりません

このような不安定な状況を背景として、いまや転職は人々にとって当たり前の選択肢になりつつあります

かつては、就職した会社でずっと働くことが前提であり、何かのきっかけがあって初めて転職を考える、というものであったのが、

今では、転職は最初から「キャリアの選択肢の一つ」として想定されています。

私たちは、転職が当たり前になることへの変化や焦りを、日々、心理的には感じているものの、

日本社会の実態の方はそれほど急激かつ劇的に変化してこなかったのです。

現在の状況は、働く人たちにとって「自分は転職した方がよいのか、しないほうがよいのか分からない」「そもそもどういう働き方を選べばよいのか分からない」という状態を生み出しており、

いわば「転職アノミー(転職してよいのか、よくないのか、視界不良の状態に人々が陥ること)」とでも呼べるでしょう。

更紗
働き方に悩んでいる医師も、「転職アノミーの状態にある」と言えますね。
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多くの人々は転職について学ばないままに転職へと挑み、その結果、「アンハッピーな転職」が量産されてしまいます。

<アンハッピーな転職をしてしまう人>

  1. 夢追い系転職者 自分がやりたいことへの信念が強すぎる
  2. キョロキョロ系転職者 自分の境遇を周囲の人たちとつい比較してしまう
  3. 盛り盛り系転職者 自分の能力を過剰に大きく見せようとする
  4. 丸腰系転職者 自分の能力(の低さ)について自覚がない
  5. フワフワ系転職者 なんとなく今の会社を辞めたいだけで、次の仕事に何を期待しているのかがわかっていない

転職とは、「転職しよう」と決心する意思決定から、事前の情報収集、転職先探し、面接、入社後の定着・活躍に至るまでの長いプロセスの中で、多くの選択と行動を伴うものです。

そして、それらはいずれも「一人」で行うものではありません。

更紗
アンハッピーな転職の可能性を減らすためには、「転職について学び、転職活動のパートナーを得ること」が大切ですね。

私はこれまで、自分の経験談から「働き方に悩む人は、転職サイトを眺めて情報収集した方がいい。転職エージェントにサポートしてもらうといい」と言ってきましたが、

本書に書かれていることと偶然にも一致していて、ちょっと安心。

更に、転職を成功させるためには「ラーニング思考」が必要不可欠とのことです。

よくある「自分に最適な場を探そうとすること」は、「マッチング思考」と呼ばれるものです。

一方、「自分が場に最適に適応すること・・・すなわち新たに学び、変化する覚悟をもつこと」が「ラーニング思考」になります。

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第1講:転職の方程式と、転職への抵抗感

第1講の目的は、「人はどのような時に離職・転職を考えるのか」、そのメカニズムを、科学的に理解することです。

それは言い方を換えれば、これから転職すべきか、いまの会社に留まるべきかの「現在地」を確かめることにつながるでしょう。

著者は、ここで「転職の方程式」を示しています。

更紗
転職アノミーの人は必見です!

<転職の方程式>
D(今の会社への不満 Dissatisfaction)× E転職力 Employability)> R(転職への抵抗感 Resistance)

働き方に悩む医師であれば、過酷な労働環境に対する不満が大きく(D)、

医師免許があることで転職力は高いはずですが(E)、

転職への抵抗感を下げておかないと(R)、いつまで経っても転職出来ないということになります。

更紗
いざという時すぐに転職出来るように、日頃から転職のハードルが低くなるような意識を持っていたいですね。

ところが転職への抵抗感は、年齢が上昇するにつれて増します。

人は年齢を重ねるほどに安定を求める傾向があり、この傾向は世界的にも共通です。

更に、転職への抵抗感を抱くのは自分のみならず、自分のパートナーにも言えることです。

これは「転職ブロック(パートナーによる転職への抵抗と制止)」と呼ばれるもので、この抵抗感には男女差があります。

日本人の場合、男性が「地位の安定」、女性が「家庭の安定」を理由にパートナーの転職を反対することが多く、

「男性は仕事、女性は家庭」という性役割分業意識が生み出す固定観念の強さを感じずにはいられません。

「転職する/しない」ということは、究極的には個人の選択ですが、

その選択は、社会的・経済的な外部環境の影響を受けざるを得ないのです。

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第2講:2つの転職力

著者によると、転職力には2種類あります。

  • ステータスとしての転職力 個人がもっている知識・経験・資格・スキル
  • アクションとしての転職力 転職プロセスのなかでの振る舞い方・考え方・マインドセット
更紗
医師は、「ステータスとしての転職力」はかなり高いはずですよね。だけど、「アクションとしての転職力」はどうでしょうか?

アクションとしての転職力とは、職務経歴書の書き方、自己PRのやり方、面接でのやりとりでの振る舞い方などであり、

これらを高めるには、「自己をどれだけ深く、正しく認識できるか」=セルフアウェアネス行動(自己認識行動)が重要となります。

例えば、ある転職者が以下のように自己認識していたとします。

転職者
自分はこれまで一社しか経験がないが、多くの部署で多様な経験を積んできた。その経験はどの会社に行っても通用するはず。

しかし、採用する側の企業からは、「この年齢で一社かつ特定の業種でしか働いたことがないのは、柔軟性に欠ける」という見られ方をすることもあります。

このような内面的自己認識と外面的自己認識のズレを認識し、重ね合わせていくのが、「セルフアウェアネス行動」ということです。

内面的自己認識と外面的自己認識を共にバランス良く伸ばしていくと、選考通過率も転職後の満足度も共に高いという研究結果があるので、

医師は「アクションとしての転職力」を意識して伸ばしていくと良いと言えるでしょう。

更紗
転職エージェントさんがサポートしてくれる部分でもありますね。

第3講:転職動機と転職相談

一般的には転職動機は、以下の6つに分類出来るとのことです。

<転職動機の6つの因子>

  1. ソーシャル 社会的意義を感じられる仕事をしたい
  2. チャレンジ 自分のスキルを向上させたい
  3. キャリア 役職を上げたい
  4. ライフ 労働時間を短くしたい
  5. リセット 人間関係を新しくしたい

①~③は次の職場と未来に向けた前向きな転職であり、転職後の幸福感が得やすく、

④⑤などの不満をベースにした動機では転職後の幸福感が得にくいそうです。

また、「転職活動中の人の72.4%は転職のことを誰かに相談している」という調査結果があるそうです。

その相談相手としては、配偶者、友人・知人、家族・親族、転職エージェント・ハローワーク、同僚・・・等が挙げられます。

そんな相談の場では、「ナラティブ・アプローチ」が有効です。

(ナラティブとは「語り」や「物語」を意味します。)

ナラティブ・アプローチは、自分をとりまく現実について話したり、能動的に物語ったりすることです。

そうすることで現実そのものを構成し、また、他者から理解されることが出来ます。

自分は何をやってきたのか、自分は何が出来るのか、自分はこれから何をしたいのか」という、

過去・現在・未来を繋いで、「あなたの物語」を作ってみてください。

そしてそれを、あなたの相談相手に話してみましょう。

更紗
自分の場合、ブログもナラティブ・アプローチになっています!

第4講:学びの機会を探しに行こう

第2講で出てきた「ステータスとしての転職力」を高めるために大切なのは、

「転職しようとしまいと、日々、仕事のなかで学び続けられてきたかどうか」ということです。

ここでいう「学び」とは、たんに知識やスキルを積み重ねることではなく、

時代や環境の変化に応じて「自己を変えていくこと」を指しています。

昨今の日本では、「社会人の学び」がしばしば話題になります。

「大人の学び直し」「リカレント教育」「生涯学習」とも呼ばれていますね。

これまで、日本の会社員の学びの中心はOJT(職場での実践を通して業務知識を身に付ける育成手法)でした。

しかし、これもいまや限界に差し掛かっているといえるでしょう。

なぜなら、OJTで個人が得る知識やスキルは、企業特殊的なものが中心となるからです。

それが転職先の企業や組織でも汎用的に通用するかどうかは不透明です。

ひとつの病院にしか勤めたことが無い人は、そこの病院でしか通用しないローカルルールが医療界の常識だと勘違いしてしまいがちだよね。

これからの時代を生きるビジネスパーソンは、所属する組織内のOJTや経験学習だけを頼りにするのではなく、

主体的に、自ら学びの機会を探していく方がよさそうです。

近年、社会人の学びの形として、「越境学習」が注目を集めています。

これは自分が属する組織・職場からいったん離れて、組織の外で学び、

その後は組織内外を「往還」しながら学びを深めることです。

自組織の中では得られない経験を積み、それを本業などに活かすことによって、より良いスキル形成、キャリア構築をしていくことが可能となります。

学びとは、多くの人が思っているよりもずっと『開かれている』ものです。

「他者」に対して開かれており、同時に「未来」に対しても開かれています。

現在とは、「学び続けること」と「変わり続けること」が重なり合いはじめた時代であるとも言えるでしょう。

第5講:流行りの転職

著者は、典型的な転職は、「自らの経験を活用しながら現在の生活圏内にある企業に転職する」ことだと言っています。

しかし昨今、非典型的な転職がブームになっているとのことです。

具体的には以下のようなものです。

  1. 地方転職 地方企業で働くこと(Uターン、Iターンなど)
  2. ベンチャー転職
  3. 独立開業
  4. 副業・兼業

<地方転職>

現在は消費・情報環境や文化接触の地域間格差も縮まり、地方移住のハードルは下がっています。

そうした動きを、コロナ禍の「三密」回避の取り組みが更に加速させました。

今後、企業が地方にサテライトオフィスを構えたり、特定部門のオフィスを地方移転させたりする動きがより加速すれば、

地方転職は私たちにとって、更に身近な選択肢になっていくはずです。

<ベンチャー転職>

こちらは若年層の間で一定の人気があり、優秀な人材が転職していく例も増えています。

ベンチャー転職が含まれる「大企業から中小企業」への転職はジワジワ増えていて、2017年時点で年間49万人となっています。

更紗
最近は、ヘルステック企業に関わる医師も多いです。

<独立開業>

近年では、2006年に施行された「新会社法」によって、資本金一円でも株式会社が設立できるようになったり、

インターネットを使って業務を受注出来る事業の範囲が広がったりしたことなどで、会社を起こしやすい環境も整っています。

とはいえ、それがものすごい数に上っている、というわけでもありません。

転職希望者の内「自分で事業を起こしたい」人は、1987年には約130万人いましたが、バブル崩壊後には約40万人にまで減っています。

景気後退に加え、少子高齢化によって若者の数が減っていることも、その要因として考えられます。

更紗
開業は、医師ならメジャーな転職ですよね。

<副業・兼業>

企業に所属したまま、他者の業務を行ったり、自分で事業を起こしたりすることです。

2018年1月、厚生労働省はモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という遵守事項を削除し、副業・兼業についての規定を新たに加えました。

それを機に、企業の間では副業・兼業を解禁する流れが一気に進みました。

総務省統計局の「就業構造基本調査」では、2017年時点で、副業・兼業している人の数は約268万人で、今後も更に増加していく見込みです。

メインの就業先に加えて「プラスアルファ」の仕事をし、副収入を得るという動きは今後も広がるでしょうし、

新しい働き方の選択肢として定着していくように思われます。

更紗
私も副業を色々しています。収入云々よりも、楽しいですよ!
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しかし、これら4つの転職がブームだからと言って、

「ブームに乗れば上手くいく」わけではない、ということは、皆さんならお分かりだと思います。

世の中に「完全転職」はあり得ません。

転職は、限られた選択肢の中、限られた判断資源のもとで決めねばなりません。

いかなるキャリアを選ぶにしても、様々な情報を収集し、自分の思いを整理し、

「セルフアウェアネス(自己認識)」を高めながら、「自分自身にとっての正解」を作り上げていくプロセスを辿る他無いのです。

第6講:新しい組織に馴染む科学的な方法

内定・入社は転職のゴールではありません。

転職先の職場で自分が望む働き方ができるようになって初めて、その転職は本当に成功した、と言うことが出来ます。

「入ってみたら全然話が違った!」なんてことになったら、成功とは言えないもんね・・・。
新しい組織・会社で、想定外の困難に直面することを、「(入社後)リアリティ・ショック」と呼びます。

著者が行った調査でも、2~3割の転職者が入社前とのギャップとして、「給与・報酬」「昇進・昇格のスピード」「上司との人間関係」などが事前のイメージよりも悪かった、と答えています。

「入社後リアリティ・ショック」を乗り越えるために求められるのは、「セルフ・オンボーディング(自らが能動的に組織に馴染むような行動)」です。

「自分に合う職場か、そうではない職場か」という二者択一ではなく、自分は変わり得る存在であるとともに、組織や環境も変わる/変えられる存在である、という考え方を基礎として、

自らが能動的に「セルフ・オンボーディング」していくことが、その後の転職者の定着・活躍への繋がっていきます。

そのためには、職場の上司や同僚たちからの支援を積極的に受けることが必要です。

<職場の上司や同僚たちからの支援>

  1. メンタリング支援 自身の振る舞いや仕事についてアドバイスをしてもらうこと
  2. ネットワーク支援 組織内のキーパーソンを紹介してくれたり、「誰が何を知っているか」という情報を教えてもらうこと
  3. フィードバック支援 自身の振り返りや気付きを促進してもらうこと
  4. セーフティネット支援 安心や心理的な安全を提供してもらうこと

しかし、万一職場でそのような支援を受けることが出来ない場合は、「組織の外の人」に目を向ける、という選択肢が存在します。

それを「オープン・オンボーディング」と言います。

現在の転職者には、この「オープン・オンボーディング」が不足しています。

自分のチームや部署だけではなく、他部署や社外のネットワークに対して「紹介してほしい」と声をかけ、会いに行くなど具体的な行動を起こしていく。

転職で外に出た人は、入社後にも人との出会いやコミュニケーションを停滞させず、むしろ転職後にこそ、それを加速させていくべきです。

また、転職先で活躍している人はソーシャルスキルが高く、特に以下の3つが重要です。

  • 関係開始スキル 自分のことを覚えてもらいやすいような、話しかけやすいような自己紹介をするスキル
  • 関係維持スキル 相手の思いや状況に合わせて行動・態度を調整していくスキル
  • 主張性スキル  自らの考えやアイデアを積極的に伝えていくスキル
更紗
新しい職場に馴染むには、「角が立たないように控えめにする」消極的な態度ではなく、「誰とでも気軽に接しつつ、周囲の状況に合わせて行動し、かつ言うべきことはしっかり言う」という柔軟で積極的な態度でいた方が良いんですね。

実際に活躍している転職者の多くが、これらのソーシャルスキルを入社後に意識しながらチューニングしているということが、著者の調査でも裏付けられています。

第7講 これだけは知りたい「ミドルの転職」

近年、日本では「ミドルの転職」が増加傾向にあります。

(ミドルの定義は一様ではありませんが、ここではおおよそ「35歳以上~40代の人たち」を指すとします。)

仕事がやっと落ち着いてきた年齢なのに、何で転職するのかな?

その背景にミドル層を取り巻く現在の雇用環境や労働市場の変化があることは間違いないでしょう。

その変化は以下の4点に整理出来ます。

  1. 長期安定雇用に対する疑い
  2. 賃金プロファイルのフラット化
  3. 社内育成重視から、中途採用重視へ
  4. 「ジョブ型人事制度」の導入

<長期安定雇用に対する疑い>

「終身雇用の崩壊」という言葉なら耳慣れている方も多いのではないでしょうか。

しかし、企業が社員を長期的に雇用する傾向そのものは、統計的に長期で見てもそれほど大きな変化は無く、「崩壊している」というほどの状況ではありません。

ならば何故、「崩壊」という言い方がされるのか。それは経済界の危機感の表れとして捉えることが出来ます。

日本企業の多くは今、「ミドルやそれ以上の年齢層の人たち(特に、50歳手前の団塊ジュニア)のパフォーマンスが処遇に見合っていない」という問題に頭を悩ませています。

それだけではなく、2021年7月、高年齢者雇用安定法の改正が施行され、「70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする」ことになりました。

これは少子高齢化による人手不足を補うとともに、社会保障の担い手を増やすための措置とされていますが、

実質的には「長期雇用の継続」を企業に対して求めるものです。

この動きに対し、高齢の社員を抱える企業側は更に危機感を募らせています。

更紗
「高齢の社員をこのまま丸抱え出来ない」という、企業側のアピールなんですね。

事実、日本の大企業ではここ数年、40歳以上や45歳以上を対象とした人員削減施策を相次いで断行しています。

一例を上げると、2021年より電通は、40代以上の社員に個人事業主になってもらい、新たに業務委託契約を結ぶ「ライフシフトプラットフォーム」という施策を実践しています。

https://newhorizoncollective.com/assets/aboutlsp/NH_LSP2021.pdf

更紗
独立することのデメリットを上手く抑えてますね!

<賃金プロファイルのフラット化>

日本企業では、若手社員の賃金はその生産性に比べて低く抑えられ、逆に高齢になるほど、それは生産性に比べて高くなっていくことが通常です。

この構造は学術的には「後払い賃金」と呼ばれてきました。

組織の高齢化が進むと、成果に対して払い過ぎの状態になってしまうため、

「定年退職」での退出や「定年後再雇用」によって、一定年齢以上の人件費を一律で下げる、という施策が必要とされます。

近年では、年齢に沿って賃金の伸び率を緩やかにしていく「賃金カーブのフラット化」が進行しています。

しかし、ミドルにしてみれば、「せっかく給与が上がってきたところなのに、今後は自分たちの先輩ほどは上がっていかない」という状況になります。

確かに、このタイミングで転職する気持ちも分かるなあ。

<社内育成重視から、中途採用重視へ>

現在、日本企業はこぞって中途採用を強化しています。

社内のミドル層の賃金上昇を抑えつつ、自社に足りない人材を内部ではなく「外部労働市場」から積極的に集めていくことで、イノベーションに挑戦したり、事業のグローバル展開を図ったりしている、ということです。

コロナ禍においても、「未経験者」の求人が激減する一方、新たにビジネスを創造・発展させていく能力を持つミドル層人材の求人は、比較的早く回復の兆しを見せました。

これは、転職を考えているミドル層にとっては、チャンスが広がったことを意味します。

しかし、そのチャンスを上手く掴んで転職を成功させられるかどうかは、また別の話です。

<「ジョブ型人事制度」の導入>

近年、日本の企業は、「管理職以上」を対象に「ジョブ型人事制度」を導入し始めています。

企業側には、「ジョブ型人事制度」の導入によって管理職の成果を厳正に評価し、上り続ける賃金を抑えたい、という思惑があります。

しかし「ジョブ型人事制度」に移行すると間違いなく、職種別の専門性がより強く求められるとともに、キャリアアップが「組織主導」ではなく「個人主導」へと移っていきます。

成果を出せなかった時に、シビアな結果が個人に跳ね返ってきます。

更紗
医師の場合、中途採用もジョブ型雇用も一般的ですね。

最終講:「辞めた会社」との付き合い方

現在、企業の間で「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)」という発想が広がっています。

会社を辞めた元従業員とも良好な関係を維持し続けようとする発想で、

具体的には、出戻り再入社制度、退職者のためのコミュニティ整備、定期的な情報発信、アルムナイ・イベント開催などの取り組みだそうです。

働く側にとっても、再入社はメリットがあります。

人間関係が出来上がっている組織に戻るわけですから、参入は比較的スムーズですし、仕事内容がイメージしやすく、辞めていた間に獲得した経験やスキルを活かすことが出来るため、業務上の障壁もありません。

パーソル総合研究所の調査では、再入社した人の4割前後がそうしたメリットを感じている、と回答しました。

以前に所属していた企業の人たちとの信頼関係を保っておけば、転職後のビジネスでも業務を受発注するなどの取引が可能となります。

特に個人事業主やフリーランスとして独立開業する場合、かつて在籍していた企業から仕事をもらうことが定石です。

更紗
一度辞めた病院に出戻る医師の話もよく聞きますね。仕事を辞める時は、また働くことも考え、なるべく角が立たないように注意しましょう・・・。
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しかし、転職によって複数の企業を数年ごとに渡り歩くようなキャリアになると、社員同士の交流は途切れがちですし、「社縁」はどうしても薄れていきます。

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会社を通じて出会ってきた人たちとの関係は、転職後には「今の会社とは関係のない、人と人との交流」という新しくシンプルな関係として、人生を豊かにしてくれます。

転職をきっかけに、人生で周囲にいてくれる他者との関係を改めて考えることも、長い「転職プロセス」の一つです。

幸せな転職を実現していくために、是非、そうした人たちとの別れと出会いを大切にしてみてください。

まとめ

本書を読んで、「より良い転職をするために大切」と感じたことを、下記の3点にまとめました。

  1. 学び続けること
  2. 変わり続けること
  3. 人と繋がること

このことは『LIFE SHIFT 』でも言われており、転職時のみならず人生において一貫して大切なことなのだと思います。

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私は数年前に臨床医から専属産業医に転職し、

当時は「自分はずっとこの家に暮らして、ずっとこの会社で専属産業医をやっていくのだろうな」と思っていました。

陰キャなので、「なるべく誰とも関わらないで生きていきたい」とも思っていました(笑)。

30代なのに、もう人生が終わるかのように感じて、少し寂しい思いを抱いていました。

しかしその後、仕事に関係あること・ないこと関わらず学び続けていたら、

自分自身の価値観や考え方が変わってきました。

今、「こんな勉強をしてみたい」「こんな働き方をしてみたい」「もっと色んな人と関わりたい」という気持ちが、ムクムクと湧いてきています。

皆さんはどうでしょうか?

働き方に悩んでいる方には、是非、変わり続ける勇気を持っていただきたいです。

転職をお考えなら、『働くみんなの必修講義 転職学』で学びを得るのをお忘れなく。

アンハッピーな転職を避けるために必須のテキストですよ!

<拙著『医師転職のススメ』シリーズのご紹介>

当ブログの集大成となる「医師転職」に特化した内容で、前後編の2部作です。

医師転職のススメ〜「転職したくなる!」前編』(著:更紗)

  • 臨床医の過酷な労働環境
  • あまり機能していない、臨床医を守る手段 など

医師転職のススメ〜「転職を成功させる!」後編』(著:更紗)

  • 転職を学問として学ぶ
  • 医師転職の具体的な手順 など

<オススメポイント>
  • Kindle Unlimited 加入者は無料で購読可能
  • ブログの内容そのままではなく、「原因自分論」や「タイムバケット」といった、より良い人生に必要な考え方を加筆
  • 体系的にブログのまとめを読むことが出来る

ブログ記事も増えてきたので、「ブログだと、どの記事を見ればいいか分かりにくい…」という方もいると思います。そんな方にこそ電子書籍はオススメです!

働き方に悩んでいる臨床医の皆さんには、是非読んでいただきたいです。
どうぞ宜しくお願い致します。
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